「優秀な人材を採用・維持するために給与水準を上げたいが、原資が確保できない」――業種を問わず、成長を目指す中小企業に共通する悩みです。公的な助成金を活用することで、賃上げの負担を実質的に軽減する方法を解説します。

賃上げの原資確保に使える制度

人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)

2026年4月の改正で、賃上げ率3%/5%/7%以上の3段階で助成額が変動する仕組みになりました。7%以上の賃上げと業務負担軽減機器等の導入を組み合わせることで、最大325万円の助成が可能です。

業務負担軽減機器等は業種によって内容が異なります。製造業であれば省力化機械、介護・福祉業であれば介護記録システムや見守り機器、小売・飲食業であればPOSレジや在庫管理システムなど、自社の業務負担を直接軽減する設備が対象になり得ます。

賃金規定制度そのものの新設も助成対象になるため、評価制度が未整備の創業間もない企業や、これまで賃金体系を明文化してこなかった企業には特に有効です。人事評価制度・諸手当等制度と組み合わせれば、賃金規定制度単体よりも助成額を積み増しできる可能性があります。

制度導入の順序が重要

この助成金は「制度導入前の計画届出」が前提です。すでに賃金規定や評価制度を独自に整備してしまった後では対象外になるため、賃上げを検討し始めた段階でまず助成金の活用可否を確認することが、原資確保の第一歩になります。

実務のステップ

  1. 現在の賃金規定・評価制度の有無を確認する
  2. 賃上げ率の目標を設定し、助成金の賃金要件(3%/5%/7%)に照らして計画を立てる
  3. 自社の業種・業務内容に合った制度区分(賃金規定制度・諸手当等制度・人事評価制度・職場活性化制度・健康づくり制度・業務負担軽減機器等)を選定する
  4. 制度導入前に「雇用管理制度等整備計画」を都道府県労働局に届け出て認定を受ける
  5. 計画に基づき制度を導入し、離職率目標の達成状況を確認する

併用時に意識すべきこと

助成金は複数の制度区分を組み合わせて申請できますが、区分ごとに助成額の上限や算定方法が異なります。人手不足感が強い業種(介護・建設・運輸など)では業務負担軽減機器等の活用余地が大きく、専門職の定着が課題の業種(IT・士業関連など)では人事評価制度や職場活性化制度との相性が良い、といった業種特性を踏まえた組み合わせの検討が重要です。

まとめ

賃上げは単なるコスト増ではなく、公的な助成金を活用することで実質負担を抑えながら実現できます。業種を問わず、自社が使える助成金の組み合わせを診断したい方は、お気軽にご相談ください。